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無料記事18:「アニマルセラピー」のコーディネーター
〜医療・福祉・教育現場と動物側をつなぐ架け橋〜
2021年12月27日 掲載
目次:
1:「アニマルセラピー」における、コーディネーターの重要性
2:コーディネーターの具体的な役割
3:コーディネーターは常に審美眼を磨き続けるべき
1:「アニマルセラピー」における、コーディネーターの重要性
いわゆる「アニマルセラピー」と呼ばれる動物介在介入の実践において欠かすことができないのが、しっかりとしたコーディネーションである。これは、いわば参加当事者たちの間に必要である様々な情報共有や調整などをするという作業であるが、それを行う者をコーディネーターという。分野別に分けられている傾向が強い日本の縦社会においては、横のつながりを支えるコーディネーターという存在が軽視されがちである。特に動物介在介入という現場の特性を考えると、動物とかかわりを持つ者たちと人間の医療、福祉や教育などの専門家という二つの全く異なる領域を繋げなくてはならない現場であることが容易に想像できる。当然当事者同士の話し合いだけでは、十分な下準備をすることが難しいと考えられる。動物福祉という言葉に対してさえ、一部のヒューマンサービス提供者たちからは「適切ではない」、「『福祉』という言葉は動物には当てはまらない」等々、批判されている現状を考えると、全く異なる枠組みの中で教育されてきた者同士の相互理解を促進することの困難さを感じざるを得ない。
しかし、動物を提供する側とそれを受け入れる側の相互理解なしにして、動物介在介入を実施することは不可能である。そのためには、双方の事情を理解した上で、両者に相手の立ち位置を正確に伝えることができる第三者がいることが極めて重要なことになるのである。その存在がコーディネーターなのである。両側が「私たちは…」という主張をするよりも、仲介者が「彼らの立場は…」と客観的に相手に伝えるほうが効果的であると同時に、互いに納得しやすいように思える。コーディネーターは、双方に対してそれぞれの責任や役割を伝えるということもやらなければならない。これも、第三者が最も効果的にできる仕事であろう。直接的に相手に「あなたたちはこうしてください」と言われることと、第三者に「この取り組みにおけるあなたの役割は…」と伝えられることの受け止め方を比べてみればわかることである。
2:コーディネーターの具体的な役割
では、具体的に動物介在介入のコーディネーターがやるべき仕事にはどのようなことが含まれるのであろうか。まずは、動物を受け入れたいという施設などの状況を把握することである。受け入れ側の知識レベルはどのようなものか?
動物が入所者に良い影響を与えてくれる
というような、極めてファジーな発想からスタートしているところが非常に多い。それに対して、コーディネーターは動物介在療法と動物介在活動の違いなどを説明しながら、施設が一体どのようなことをやりたいのかを明確化していくステップを踏まなければならないのである。本当に動物を受け入れられるかについてのチェックも必要である。施設の構造、体制、地理的条件、入所者の特性等々から、動物を受け入れること自体不可能であると判断しなければならない場合もある。また、問題が解決可能なものであれば、何をすれば良いかなどの助言をする必要もある。そのような基礎工事の末に、ようやく動物を連れて入るための計画を立案する段階に到達できるのである。無論、そこで必要となってくるのは実際の現場で行われている手法などに関する知識である。それがなくては、プログラム構成や実践の計画などを提案することもできない。また、この段階のあたりから動物を提供する側を巻き込んで準備を進めるのであるが、言うまでもなく、
活動適性のある動物とそのハンドラーのペア
がいなければ動物介在介入自体が成り立たない。そのために、コーディネーターは実際に活動する者たちへのアクセスがなければならない。そして、その者たちの協力を得て、時には受け入れ側の理解をさらに深めるためのデモンストレーションや説明会の開催準備を進めるといった作業を展開させるのである。
実質的な動物介在介入のプログラムを組み立てた後も、コーディネーターはかかわりを絶つわけにはいかない。実践の現場で問題が生じた際のトラブルシューティングをするのもコーディネーターの役割である。また、実践者たち(ハンドラーと動物)の基礎教育に始まり、継続教育や活動意欲の維持・支援なども続けていかなければならないのである。
3:コーディネーターは常に審美眼を磨き続けるべき
このようなマルチの作業をこなしていくためには、コーディネーター自身がかなりの知識を身に付けておく必要がある。動物介在介入の分野は常に進化をしているいわば発展途上の分野であり、新しい情報が常時流れてくる。コーディネーターは、これに置いていかれないよう努力し続けるべきであろう。重要な情報源となる「人と動物の関係に関する国際組織(IAHAIO)」
1)
は、3年ごとに開催されている。またそのウェブサイトには、様々な情報が公開されている。動物介在介入の老舗と言われている米国のペット・パートナーズ(Pet Partners、旧Delta Society)
2)
が出している動物とハンドラーの適性認定の基準なども、年月を経て改訂され続けている。このようなことを含め、コーディネーターはこの分野の最新情報や現状の問題などに常にアンテナを張り巡らせていることが大切である。最近では、「アニマルセラピー」と称した活動がやや乱立気味であるが、コーディネーターは、これらの様々な試みを見てそれらの実態を評価する能力も持つべきである。
人間の医療、福祉や教育などの現場に動物を入れるということには様々なリスクがある。しっかりとした情報基盤に基づいて組み立てられたプログラムであっても、「何かが起こる可能性」から逃れることは不可能である。そのためにも、コーディネーターはリスク管理のプロでなければならない。そのようなプロとしての技を磨くために役立つのが、各種の試みを見てそれらに対するクリティカル・シンキング(critical thinking、批判的に考える能力)を実践してみることである。人間に何かをもたらすために動物が登場する場面に対して一般社会は「温かい目」を向けがちであるが、そこにはどのような危険が潜んでいるか、動物が本当に人に何かをもたらすことができる良好な状態にあるか等々について考えてみることが重要である。コーディネーターとしての審美眼を磨くための重要な機会として捉えてほしい。
動物介在介入のコーディネーションのように、全く異なる分野を繋げることは簡単なことではない。また、一般社会においてはまだまだ動物に対する見方に偏りがある。コーディネーターは、そのような偏りを是正することもしなければならないのである。同時に、ヒューマンサービスの提供者にとっては当たり前のことである守秘義務や弱者に対するリスペクトなどを、動物を伴って活動するハンドラーたちにも教えていかなければならないのである。正に架け橋であるコーディネーターが、今後もっと活躍できる場面が増えていくことを願うばかりである。
当法人では、動物介在介入のコーディネーターの具体的な役割と動物介在介入で実際に使われる手法・技術に関してまとめた電子資料「
動物介在介入のコーディネーションと実践的手法〜動物介在プログラムの立ち上げと触れ合いのための実践技術〜
」を販売している。動物介在介入のコーディネーションの段取りや留意事項、さらには動物介在介入の実際の「動物との触れ合い」部分に活用できる手法や技法の基本について整理した電子資料である。動物介在介入のコーディネーターを目指したい、または導入したいという関係者や動物介在プログラムの組み立てに携わる医療福祉施設や動物のハンドラーはもちろん、動物介在介入に携わるあらゆる関係者にお勧めしたい資料である。
1)
https://iahaio.org/
2)
https://petpartners.org/
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