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無料記事11:日常生活で私たちがお世話になっている実験動物を取り巻く情勢
アニマル・リテラシーを身に付けませんか?
2020年04月24日 掲載
日常生活で私たちがお世話になっている実験動物を取り巻く情勢
アニマル・リテラシーを身に付けませんか?
私たちの生活にかかわる動物というと、ペットの犬猫を思い浮かべる人が多いであろうが、普段私たちが直接目にすることがなくても、私たちの日常生活全般を支えていると言っても決して過言ではない大切な動物たちの存在をご存じだろうか。
それが科学の基礎研究や、医薬品や化粧品をはじめとする様々な日用品が消費者にとって安全であることを担保するための安全性試験に使われる、実験動物たちである。
そして、今日、4月24日は「世界実験動物解放デー(World Day for Laboratory Animals)」に定められているのである。
アメリカやヨーロッパでは、毎年利用されている実験動物の数について、政府が正式な集計を公表しているが
1), 2)
、日本ではこのような公式かつ包括的なデータがなく、何匹の動物が私たちの生活を支えるために消費されているのか、その実態は不明である。数年前に日本国内の実験動物の販売頭数を調べた調査
3)
では、販売されている頭数だけでも様々な種類の実験動物が数百万匹使われていることが示されている。研究施設内での繁殖や、この調査の対象とならなかった供給業者のものなども鑑みると、これ以上の数の動物たちが私たちの生活を支えるために消費されていることが容易に想像できる。
ちなみに、欧州連合の正式な集計結果によると、2015年から2017年の期間においては、欧州連合では毎年約9百万匹強の実験動物が使われているとのことである。
2)
そんな私たちの生活を支えるたくさんの実験動物たちであるが、彼らに光が当たることが滅多にないというのが現状であろう。つい昨年、動物愛護法の改正が成立したが、実験動物については議論されたものの、結局は今後の検討課題として附則に残ったのみで、議論の最中も、メディアがこの課題について取り上げた記事などは、ペットの犬猫にかかわる課題と比べて圧倒的に少なかった。また、動物好きの消費者の中でも、実験動物たちの状況に関心を持っている人間が少ないのではないだろうか。私たちが日常的に手に取るものの多くを作り出すため、さらには、私たちの医療の根幹を形成する基礎研究にたくさんの実験動物たちが使われ、彼らにお世話になっているにもかかわらず、そして動物好きのペット飼育者がかわいがっている犬、猫、ウサギ、モルモット、ハムスターなどの馴染みのある動物たちが使われているにもかかわらず、である。
実験動物の扱いや、動物実験の数そのものを減らすという試みは、「動物問題」だけでは終わらない。例えば、製品の安全性を担保するための動物実験の要件や制限についてみてみよう。各国でバラバラな要件を設けていると、A国である製品を販売するためにとある動物実験が要件となっていても、B国ではその動物実験が禁止されている場合、その製品を販売したい会社はA国で販売する製品ラインでは動物実験を実施し、B国での販売ラインではその動物実験を実施できない。このように、動物実験の規制について各国の足並みが揃っていないと、企業が国によってバラバラな対応をしなければならず、様々な国で製品を販売する際の貿易の障壁となりうる。「規制の足並み」の点について補足すると、現在世界各国では、消費者により動物への配慮を求める声が挙がっているのはもちろん、後述するように、動物実験よりもよりヒトに即した効率の良い方法に移行するという流れがあり、動物実験が廃止されたり、他の方法に切り替えられるという方向に動いている。
また、動物実験ではどうしても種差の問題があり、製品のヒトへの安全性や効果などについて動物実験で「安全」・「効果がある」と示されても、その後の人間を対象とした臨床試験で実は効果がないなどということになってしまう場合もある。簡単に言ってしまうと、ウサギやマウスを使った実験では、化学物質がヒトに対してどのように作用するかは適切に予測しづらい場合があるのである。例えばヒトの疾患の仕組みの研究やヒトが使う医薬品の研究などの医療健康分野の基礎研究においても、動物で実験した結果のヒトへの外挿性というものには限界があると言われている。多額の資金と労力をかけて実験動物で試験をしても、それが必ずしもヒトに当てはめられない結果となると、動物実験は決して効率の良い方法とは言えない。
そこで、動物に頼らず、ヒト生物学を基盤とした最新の科学技術を駆使した方法に動物実験から移行しようという動きが出てきたのである。高スループットのコンピューターモデルや、ヒトの臓器を小さなチップの上に再現した「臓器チップ(organ-on-a-chip)」などである。これらはよりヒトに即した方法であるため、動物実験よりも効率的で、製品の安全性試験にこの技術が応用されれば、人間に対する安全性の向上にもつながる。近い将来すべての動物実験が動物を使わない方法に置き換わるというようなスピードで変化が起こっているわけではなく、動物実験は当面必要な方法であることには変わりはないが、世界の大きな流れは着実にこの方向に進んでいる。
ここまで読み進めてくださった読者であれば、実験動物を取り巻く状況一つをとっても、決して「動物問題」で片付けられない側面が数多くあるということをご理解いただけたであろう。実験動物こそ、動物関係者以外の様々な領域の人間が、アニマル・リテラシーを身に付けなければならない課題なのではないだろうか。また、どのような消費者でもお世話になっている動物たちであるため、動物の専門職ではなくても、「動物好き」の一般市民こそ、実験動物に関するアニマル・リテラシーを身に付け、考えるべきではないだろうか。
そんな読者のために、無料のリソースを一つ紹介したい。動物にかかわる様々な団体などの連合である「
動物との共生を考える連絡会
」が公表した「
資料集:動物実験のあり方を考える
」という資料集である。世界各国の動物実験・実験動物にかかわる法規制を外観した記事や、日本で動物実験や動物を用いない研究・試験方法(動物実験代替法)の開発にかかわる専門家が執筆した日本の現状に関する記事が収載されており、日本語で無料で読める包括的な資料としてはとても情報量が豊富なものである。関心のある方はぜひ目を通してみてほしい。
1)
アメリカでは、動物福祉法のもと登録されている研究施設と政府機関の研究施設の集計が公表されている: https://www.aphis.usda.gov/aphis/ourfocus/animalwelfare/sa_obtain_research_facility_annual_report/ct_research_facility_annual_summary_reports
2) 欧州連合では指令2010/63/EUにおいて、各加盟国が実験動物の利用状況についてデータを集めて公表することが求められている。2015年〜2017年のデータが集計された最新版の報告書が2020年2月に公表されている。
https://ec.europa.eu/environment/chemicals/lab_animals/reports_en.htm
3) http://www.nichidokyo.or.jp/pdf/production/h28-souhanbaisu.pdf
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