さてさて、これは一体どのようなことなのだろう?これは別に珍しいことでも奇天烈なことでもない。子どもたちの世界は今やサイバー空間にどっぷりとつかっているのである。米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)では、インターネットゲーム障がい(internet gaming disorder)という言葉が取り上げられるようになってきている。1)また最近では、シリコンバレーに勤務する親たちの間で自分たちの子どもを自然志向の強い幼稚園などに入園させる傾向が強まっているようである。人間同士の体験の共有はネット上でもできないわけではないが、「顔の見える」関係での体験の共有とはやはり違うと言われている。
子どもたちと動物を接触させる試みには様々なものがあるが、それらには皆はっきりとした目的がなければならない。動物を介在させる教育の目標には一体どのようなものがあるのであろうか?生命を尊重させるようにするためには本当に生きた動物と接することが必要なのであろうか?また学校動物の役割とは一体何なのであろう?子どもと動物という課題に関わる様々な試みは重複するところもあるが、それぞれ異なる目標や実践への指針があり、動物を教育に用いることを検討している者は、その基本を理解することが必須であろう。また、動物は子どもたちにとって必要な要素であるとはいうものの、やり方を間違えれば子どもたちと他の命との関係が歪んでしまう可能性もある。「動物介在教育(AAE)と生命尊重教育の基本 〜保護者、教職員、そしてすべての大人たちへ〜」は、そのような様々な試みの意味や違い、動物が子どもにもたらす恩恵や生命尊重教育の落とし穴など、様々な課題を取り上げ子どもと動物というテーマに対する基礎的な情報を提供している。ぜひ未来の地球市民の教育に役立てていただきたい。
1) Gentile, D.A. et al. (2017). Internet gaming disorder in children and adolescents. Pediatrics, 140, S81-S85; DOI: 10.1542/peds.2016-1758H