動物虐待を、「動物がかわいそう!」という視点だけにとどまらず、さらに一歩踏み出して、その他の暴力などと連動する反社会的行動の「一症状」として捉えることにより、動物に対する残酷な仕打ちのみならず、弱い立場にある人間に対する暴力の予防や早期発見にもつながる可能性があるのである。最近、人間と動物双方の専門家の間で、人間と動物の福祉は表裏一体であるということを意味する「One Welfare」や、人間の社会福祉上の課題に動物問題が見え隠れしており、それに対応する領域をあらわす「Veterinary Social Work」などの概念が注目されつつあるが、今まさにこれらの視点が求められているのではないだろうか。動物に対して暴力が振るわれているところでは、人間にその暴力が及ぶ危険性が高く、また逆も然りなのである。