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無料記事35: 「アニマルセラピー」におけるボランティア教育の必要性
2025年4月8日 掲載
目次:
「アニマルセラピー」における、ハンドラー(動物を扱う人間)の役割とは?
参加動物も人間側(ボランティア)も評価される
ボランティアに求められる知識とは
ボランティアや受け入れ側に求められる姿勢
「アニマルセラピー」における、ハンドラー(動物を扱う人間)の役割とは?
医療福祉施設などにおける動物を導入する所謂「アニマルセラピー」(正式には動物介在介入(animal assisted intervention, AAI))の実施に欠かせないのが、動物を連れて施設などを訪問し、その動物の管理を行うと同時にその
動物の福祉
が守られるように配慮するハンドラー(動物を扱う人間)である。動物介在介入の世界では、このハンドラーという用語が一般的に用いられている。現状ではボランティア・ハンドラーもいれば、有料のサービスを提供するハンドラーもいるが、いずれも上述した動物の管理を行いながらその福祉を守るという役割を担う点に変わりはない。
最近、このハンドラーを指すために「付添い人」という言葉が使われているのを耳にすることがあるが、この用語にはいささか疑問を感じてしまう。動物に付き添うということは、一体どのようなことであろうか?例えば、稽古ごとに通う子どもに付き添う保護者がいるが、その保護者は子どもを稽古場に連れていき、その後は師匠などに子どもを任せ、自分は傍観するという役割を果たしているのではなかろうか?動物の付き添いをするということが、このようなことと同じ意味であるとすれば、活動の現場では動物を訪問対象者に「任せてしまう」ということになり、ハンドラー自身は単なる送迎者であるということになってしまう。しかし、実際には、訪問の現場にて動物と訪問対象者とのかかわりを円滑に進めるような「仕事」をするのがハンドラーの役割なのである。
参加動物も人間側(ボランティア)も評価される
米国の動物介在介入に関する情報提供の老舗と言われているペット・パートナーズ(Pet Partners)
1)
の参加適性認定試験を行うエバリュエーター(evaluator, 評価員)が用いる評価用紙には、動物とボランティア・ハンドラーの欄が別々に記載されている(参加動物とボランティアに求められる事項の概要についてはペット・パートナーズのウェブページ
2)
も参考にしてほしい)。試験中は、それぞれの評価が行われるということなのである。動物の適性が高く評価されたとしても、ハンドラーに何らかの問題があると評価された場合には、不合格判定が下される場合もある。
それでは、ハンドラーにとって必要な技術とはどのようなものであろうか。まずは言うまでもなく、動物の行動管理技術に加えて動物の福祉を重んじているという振る舞いであろう。しかし、それらに加え試験官や周囲のスタッフ、そして他の受験者などに対する適切な対応が評価対象となるのである。礼節をわきまえた態度や話し方、服装や身だしなみなども重要視される。動物も人も総合的に見て医療、福祉や、教育などの現場に入るにふさわしいか否かが評価されるのである。しかし、ハンドラーとして施設を訪れるために必要なのはこのような「実践」に特化したことだけではない。
ボランティアに求められる知識とは
例えば、動物介在療法(animal assisted therapy, AAT)と動物介在活動(animal assisted activity, AAA)の違いを説明できるかなどは重要なことである。訪問を依頼された際には、依頼してきた施設などの管理者たちにその違いをはっきりと理解してもらえるように説明し、どのような形での動物の導入を希望しているのかを確認する必要がある。ハンドラーは、自分がお届けできる「サービス」を明確に提示することを心がけなければならない。また、受け入れ側が口にするであろう「動物」に対する様々な疑問に答えることができる知識と意識が必要とされる。自分が答えられぬ事項に関しても、どこに問い合わせれば適切な情報を得ることができるかについて知っておく必要がある。なお、上記のAATとAAAの違いなどについては、当法人の動物介在介入に関する基礎知識を整理した電子資料(PDF)「
動物介在介入(AAI)の基礎知識 〜失敗しない活動のために〜
」においても解説されているので、そちらも参考にしてほしい。
さらに、訪問対象者たちや施設そのものに対する守秘義務などの常識的知識も持っていなければならない。対象者たちが置かれている状況の基本的情報を求める姿勢も重要であろう。
そして、最も重要なのは自分が連れていく動物に対する対応である。前述したように、自分の動物を守ること、その福祉が侵害されぬように立ち回ることがハンドラーにとっては最も重要な任務である。そのためには、訪問対象者と自分の動物との相性を評価できるような思考力も必要であり、また触れ合いの際に動物を守るために用いることができる細かい「技」などを取得しておくべきであろう。加えて、状況に合わせた活動の組み立て方、動物との良好な関係の模範となるようなパートナーシップを見せることの大切さの認識など、ハンドラーが心がけておかなければならないことはたくさんあるのである。
ボランティアや受け入れ側に求められる姿勢
我が国おける動物介在介入の現状を見ると、そこに携わる者(実践者となる者たち)の教育が十分でないところが多々あるように思われる。動物はどのようなものでも訪問対象者に「
癒し
」をお届けすることができるという、表面的な認識だけでスタートしてしまうことがしばしばあるように思われる。これは、ハンドラー側や動物提供組織だけの問題ではない。受け入れ施設側も入所者・患者たちに動物を触れ合わせることは良いことであり、彼らの生活の質を向上させる有効な手段であると短絡的に考えてしまう傾向があると感じることがある。それ故に、受け入れ側も何を求めるべきなのか、そしてそれが何故大切なことであるのかを今一つ理解しきれていないようである。適切な準備とは何かについて知り、それを訪問を依頼したハンドラーがきちんと実践しているのか等々を、受け入れ側も確認するべきであろう。
さらに、動物を伴って訪問する者たちも常に自分たちの知識をアップデートし、確かな情報に基づいた活動を展開させるよう心がける必要がある。動物介在介入の分野はまだまだ発展途上である。そのために、プログラムを展開させる現場もどんどんと広がりつつある。しかし、「動物が届ける癒し」を過大評価し、必要なステップを踏まずに突き進んでいく人々が目に付くようになっているのも事実である。どのような現場がありそれぞれにおいて何が求められるのか、またそれに動物が果たして応じられるのかなどを再度検討すべきような場面も見え隠れする。その中で、ハンドラーとして自らの大切な伴侶である動物を連れて作業をしようと考えている人々には、自分がどのような知識、意識や技術を持っておくべきかについてじっくりと考え、勉強を重ねていく意思をより強く持ち続けてほしいものである。
当法人では、動物介在介入のボランティア教育に関する電子資料(PDF)「
動物介在介入のボランティア教育〜『アニマルセラピー』をより質の高い取り組みにするためにボランティアに教えるべきこと〜
」を販売しているが、ボランティア(ハンドラー)の教育に関する資料を執筆した背景には筆者のこのような思いが詰まっている。
1)
https://petpartners.org/
2)
https://petpartners.org/volunteer/requirements/
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