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無料記事34: 消費者教育におけるアニマル・リテラシー
2025年1月31日 掲載
目次:
様々な「商品」でお世話になる動物たち
動物愛護の観点から、消費者におけるアニマル・リテラシーの必要性
多岐にわたる課題とつながっている、「商品」としての動物たち
消費者として、納得した「商品」を購入できるようになるために
様々な「商品」でお世話になる動物たち
私たち人間は、生活の中で様々な動物たちに接している。家族の一員として共に暮らしているペットはもちろんのこと、私たちが使う様々な製品の開発や安全性の確認のために使われている
実験動物
、そして私たちの食卓に上がる食べ物の生産でお世話になっている畜産動物などがそのほんの一例である。また、教育や娯楽などに使われる様々な施設の展示動物も私たちが接点を持つ動物の一つである。このように、ペットと暮らしていなくても、動物が好きではなくても、私たちは社会で生活する上で、様々な動物にお世話になっているのである。言葉は悪いが、言い換えると、動物そのものまたは動物を活用して作られた様々な「商品」や「サービス」を選択し、「消費」しているとも言えるのである。
(※)
本記事では、そんな私たち人間と動物の関係性をあえて、「消費される商品・サービス」と「消費者」として捉え、消費者教育において、何故アニマル・リテラシーが重要なのかについて、考えてみたい。
動物愛護の観点から、消費者におけるアニマル・リテラシーの必要性
「消費」している商品にかかわる動物たちがどのような扱いを受けているかについては、当然動物好きであったり、ペットと暮らしていたり、動物関係の仕事をしているなど動物に携わる生活をしている者にとっては気になる点であろう。劣悪な飼育環境で動物を販売するペットショップや、いわゆる「悪徳ブリーダー」など、ペットの市場においても商品である動物たちがどのように扱われているのか、問題視されるようになってからだいぶ時が経っている。動物愛護の観点から、このような
動物の福祉
に配慮がない動物の扱いをする業者を責める声も度々耳にする。しかし、市場では、需要があるために供給する側が成立するという点を決して忘れてはならない。「特定の動物種(または犬種や猫種)がほしい」、「様々な種類が販売されているところで手ごろに選びたい」、「ペットショップ以外にペットの調達先を知らない」等々の様々な理由で需要が生まれ、そして何よりもペットショップで売られている動物たちの境遇にまつわる様々な問題点について知らない、よってその「商品」の「生産・管理」について知ろうとしないという消費者の無知が需要を維持する一要因となってしまっている懸念はぬぐえない。
ペット市場における「動物」という商品の扱いについては議論されるようになって随分経っており、動物の扱いを気にする「消費者」が購入の際にどのようなポイントに気をつけるべきか等々、いわゆる消費者教育のリソースもだいぶ増えてきている。例えば、ブリーダーやペットショップから動物を購入したい消費者が、その業者が適切な動物の扱いをしているかどうか見極めるための「訪問したペットショップ・ブリーダーのチェックポイント」
1)
のような情報を公開している動物保護団体も少しずつ出てきている。また、海外の動物保護団体では、「子犬の契約書」と題し、消費者が子犬を購入する際に、業者にどのような情報開示を求め、どのような条件をつけるべきか等々をまとめた消費者用のガイドラインを公開しているところも存在する。
2)
ペット業者の動物の扱いは動物愛護上も大いに気にすべき点ではあるが、あえて「消費者」という視点から見ると、当該動物の健康状態などは購入する「商品」の「品質」そのものである。ペットショップから購入した動物が病気を持っており、膨大な獣医療費がかかったなど、ペットの購入の際のトラブルはよく耳にするが、こういったトラブルを避けられる賢い消費者となるためにも、商品として売られている動物がどのように「生産・管理」されているかについて知ることは重要であろう。
近年は、動物の飼養管理に一層注意を払って運営されているペットショップや、優良なブリーダーもおり、消費者にその意識と知識さえあれば、購入場所として、動物への配慮がなされている所を選ぶこともできる。また、当たり前ではあるが、行政の動物愛護センターや民間の動物保護団体では、新しい家族を探しているペットたちをたくさん抱えている。消費者として、どのような「商品」を求めているのか、考えた上で、自らが納得するものを選択できるということである。
多岐にわたる課題とつながっている、「商品」としての動物たち
アニマル・リテラシーを身に付けた上で購入したい商品を選ぶということは、決して動物好きの人のみが気にすべきことではない。また、アニマル・リテラシーを身に付けるということは、動物に配慮した、すなわち動物のためを思って商品を選ぶということ以上の意味を持つ。以前紹介したように、
動物にかかわる課題に取り組むことは、私たち人間の健康や安全などに恩恵をもたらすこともある
のである。例えば、最近ではエキゾチック・ペットや様々な野生動物を扱うアニマル・カフェなど、「商品」としての野生動物に需要がある現状があり、日本の消費者の3人に一人がエキゾチック・ペットに触れてみたい、6人に一人がそのような動物を飼ってみたいと思っていることが意識調査
3)
により報告されている。しかし、安易に野生動物と接触することは、野生動物から新たな感染症が流行する恐れがあり、人間の公衆衛生上リスクが高いという点は、多くの専門家らが警鐘を鳴らしているところである。
4)
実際、新興感染症(新しい、今まで未知だった感染症)の約6割において人獣共通感染症が寄与していると言われており、その多くの発生源が野生動物であることが指摘されている。
5)
また、野生動物の需要の拡大は、密輸・密猟などの違法取引の増加につながるとも考えられており
4)
、このような背景について知らない私たち一般消費者の「見たい」、「ほしい」、「かわいい」などの野生動物を安易に求める声が、動物たちそのもののみならず、私たちの健康を脅かし、違法取引を助長させるに至ってしまう可能性があるのである。
私たちが食べ物の生産でお世話になっている畜産動物についても、消費者としてアニマル・リテラシーを身に付けることが私たち人間の暮らしに直結した課題について知るきっかけとなる。以前の
記事
でも言及したように、狭い場所に大量に動物を閉じ込め、動物の福祉よりも生産性や効率性を重視した「工場的畜産(factory farming)」は、動物に過度のストレスがかかり免疫力が低下するために疾病に感染するリスクも高く、人間の食の安全や健康の課題とつながっていることが指摘されている。また、このような生産体制は温室効果ガスの排出や周囲の土壌や水源の汚染など、環境問題を引き起こすことも指摘されている。
6)
動物の福祉に配慮しない生産体制が、人間の生活の安心・安全を脅かす課題を引き起こしかねないということである。正に、動物の福祉と人間の生活の質が表裏一体であることを謳う「
ワンウェルフェア(One Welfare)
」の具体例と言えよう。
消費者として、納得した「商品」を購入できるようになるために
消費者としてアニマル・リテラシーを身に付けてもらえるような教育は、動物愛護教育とは似て非なるものである。確かに、本記事で整理してきた「商品」としての動物の背景にある様々な課題には動物福祉上のものも見え隠れしており、動物によりやさしい選択をしたいという消費者であれば、このような情報を得ることにより、より動物に配慮した形で生産された商品を選んで購入できるようになるだろう。
しかし、本記事で触れた通り、動物がかかわる商品の背景に見え隠れする課題の多くは、人間の生活の安心・安全につながるものである。すなわち、商品の選択によって、私たち自身の生活が少なからず影響を受ける可能性があるということである。
人が商品を選ぶ理由は様々である。自分自身の価値観に合ったものというだけではなく、価格や利便性など多岐にわたる要素を天秤にかけ商品を選択していくわけである。このような中、動物にかかわる「商品」についても、何を選ぶかは人それぞれ、各々の事情に合ったものを選べば良いということは、他の商品と何ら変わりはない。しかし、どのような商品やサービスにおいても言えることではあるが、その商品やサービスを知って納得した上で選択をする、すなわちインフォームド・チョイスを発揮することが賢い消費者となるためには重要になってくる。動物がかかわる「商品」でもこの点は同じで、生産過程において消費者自身が納得のいく動物の扱いがなされているものを選ぶためには、やはりアニマル・リテラシーを身に付けておくことに越したことはないということである。
(※)
当法人は、動物が感覚のある生命体であり、リスペクトされるべき存在であるという信念に基づきサービスを提供していますが、消費者教育という趣旨に沿って、本記事ではあえてこのような表現を使うことをご了承ください。
1)
https://www.jaws.or.jp/wp-content/uploads/2022/04/ebee763939d3daee628df7a52def8478.pdf
2)
https://www.rspca.org.uk/webContent/staticImages/Microsites/PuppyContract/Downloads/PuppyContractDownload.pdf
3)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210304wildlife01.pdf
4)
https://conbio.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/csp2.12867
5)
Jones, K.E., Patel, N.G., Levy, M.A., Storeygard, A., Balk, D., Gittleman, J.L. & Dszak, P. (2008). Global trends in emerging infectious diseases. Nature, 451, 990-994.
6)
https://www.compassioninfoodbusiness.com/media/3817096/beyond-factory-farming-report.pdf
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