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特別無料記事1
動物福祉に配慮した動物園(前編)
2020年01月10日 掲載
特別無料記事1 − 動物福祉に配慮した動物園(前編)
2019年8月24日に、
アニマルリレーションシップ deux様
主催で、動物園のあり方を考える講演会「
〜動物の幸福と、私たちはどう向き合うか 〜
」が開催されました。
演者は福岡県の
大牟田市動物園
の椎原園長と当法人代表理事の山崎恵子でした。大牟田市動物園は、最近動物福祉を主たる理念として掲げていることで注目を浴びている施設です。椎原園長は今どのようなことが動物の飼育・展示に際して重要視されるべきか、大牟田では何を大切にしているかなどを熱心に語られました。
動物園の展示動物たちの福祉は、専門家はもちろん、動物園を利用する一般消費者である来園者にとっても、身に付けておくべきアニマル・リテラシーです。そこで、上記の講演会において語られた動物園における動物福祉のあり方に関するポイントを、2回に分けて無料記事としてお届けします!
まず、多くの動物園がその運営の軸をどのようなところに置いているかという点ですが、椎原氏は設備の大きさやデザインを売り物にしているところが多いと同時に、珍しい動物やかわいい幼体なども売り込みに使われていると指摘しました。「動物の赤ちゃん」は、そのかわいさが売りものになり、集客につながるということなのです。しかし、それが本当に動物園の活性化につながるかというと、実はそうではないようです。珍しい生き物や動物の赤ちゃんなどは、一時の集客につながっても、その後常時そのような新しいものを提供し続けなければならないということになってしまう、と椎原氏は語っています。
椎原氏は動物園の存在意義そのものは一体何であるかも考える必要があると提起しています。確かに人間は様々な形で動物を利用しながら生きてきたわけであり、動物園にもそれなりの役割があるようです。しかし、今考えるべきは何を優先させるかということであるという指摘もありました。動物の生活そのものを重んじることも重要であり、観客を喜ばせることとの優先順位を考え、両者のバランスを再検討することが大切であるということなのです。さらに、大牟田市動物園は、動物種をひとくくりにせず「個」として捉えるという考え方を持っていると椎原氏は強調しています。種としての特性はあるが、人間同様、動物にも「個」があり福祉は一頭一頭と向き合って考えることが重要なのです。飼育する側が、毎日「動物を見る」ことも大切です。ようするに、動物を見てその日の彼らの気分を考えることが重要なのです。
また、動物にとって最も大事なことは「安心できる場所」が提供されることであるということも語られました。好物を与えても安心できなければ動物を喜ばせることはできません。「人間も戦火の中で美味しいステーキを与えられても、それを美味しいと感じることができないのと同じである」と言われれば、なるほどと納得してしまいます。
触れ合いに関しても、以前はモルモットを膝の上で来園者が抱っこできるようになっていたものを、大牟田市動物園は劇的に変化させてしまいました。「動物が人に触られることは一体どのようなことなのか?」と椎原氏は問いかけます。おとなしい個体は、もしかしたら逃げられないと悟っていたり、怖くて動けないなどの状況に置かれているのではなかろうか?そうであれば、「嫌なことを嫌と言える環境」を作り出そうと考え、今大牟田の名物ともなっている「
モルモット・ロード
」を用いた新たな触れ合いの形式が登場したのです。
このような考え方の路線上にあるのが、最近大牟田を有名にしたハズバンダリ―・トレーニングです。採血など「嫌なこと」を飼養管理上やらなければならないが、それを嫌なことにしないために徐々に受け入れてもらうようにするポジティブなトレーニング法です。それを実施する際の最も重要なポイントは、本当に小さなステップで段階的に受け入れをさせていくという点です。人間が欲を出してこれが大丈夫ならさらにもっと大きなことを動物に受け入れてもらうこともできるかもしれない… と無謀に前進してしまうと信頼関係が崩れ、元に戻ってしまうのです。嫌なことを受け入れてもらうようにするコツは、動物が嫌になる前に人間側が自らにストップをかけなければならないタイミングに気づくことなのです。さらに、動物が本当に嫌だったら「嫌なこと」から「安心できる場所」へいつでも逃げられる環境であること、「動物を環境に慣らしていく」ではなく、「環境を動物に合わせていく」という発想の転換が必要なのです。
大牟田市動物園のスタッフの作業の原点がおそらくそのようなところにあるのでしょう。椎原園長の講演を聞きながら、「動物に嫌なことをすれば嫌がられるのは当たり前」、「動物が安心できなければ健康で幸せな姿になれないのも当たり前」と強く感じました。
このような、動物園の展示動物の福祉のあり方にかかわる背景を知り、アニマル・リテラシーを身に付けた上で動物園に足を運ぶと、また違った景色が見られるのではないでしょうか。
モルモット・ロード (YouTube)
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